「歯ぎしり」と「補綴治療」

「歯ぎしり」と「補綴治療」
「歯ぎしり」について少し説明します。
歯ぎしりというと、睡眠中にキリキリと不快な音を伴って
歯を擦り合わせる習癖を思い浮かべられると思います。
あまり知られていませんが音を生じない「くいしばり・咬みしめ」と
呼ばれる習癖も歯ぎしりの一つです。音がしないのでわかりにくいのですが、朝起きた時に歯や顎に疲労感や痛みがある場合には、この習癖が疑われます。
いずれも歯を合わせる習癖である事に変わりはなく、これらが強い力で
行われたり、弱くても長時間持続すると様々な障害の原因となります。
例えば、歯や歯周組織に直接的に作用して、歯の摩耗や破折の原因となるし、
歯周病に罹患していると、歯が揺すられてさらに悪化します。
歯ぎしりが原因で歯を失う事は稀ではありません。
天然の歯だけでなく補綴された歯も影響を受けますが、特にセラミックスや
埋入直後のインプラントなどは歯ぎしりの為害作用を受けやすいことが
知られています。つまり時間と費用を費やして補綴歯科治療を受けて、
歯磨きをしっかり行っていても、歯ぎしりに対する適切な対応が
行われていないと、せっかくの治療が台無しになてしまいます。
歯ぎしりの原因としては「特定疾患」「性格」「ストレス」「遺伝」「服薬」「飲酒」「喫煙」などさまざまな因子があげられ、個人によっても異なると
考えられていますが、未だ一定の結論は得られていません。
従ってまずは、ストレスマネージメント飲酒や喫煙に対する指導など、
全身健康管理の面でも大切なことを行います。
歯科的な対応策としてスプリント療法が行われ、歯を覆うスプリント
(マウスピースのような器具)を睡眠中に装着していただきます。
スプリントによって歯ぎしりをある程度は抑制出来ますが、
その効果は短時間しか持続しません。それでもこの療法が用いられるのは、
歯ぎしりから歯を守ることが出来るからです。
また、スプリントには歯ぎしりの音を小さくする効果もあります。
スプリント療法は、健康保険が適用される安全で簡便な治療法です。
前述のように補綴歯科治療は歯を失って損なわれたQOLを向上する役割を
担っていますが、クラウンや入れ歯、インプラントを入れて終わりでは
ありません。良好な治療予後を確保するため虫歯や歯周病の予防だけでなく、
歯ぎしりについても適切な管理が必要です。